私好みのお酒を選んでくれる “お酒ソムリエ”
「酒の店 五百川屋酒店」
利酒師・ワインアドバイザー 樋口豊さん
その土地で取れた物を、その土地でいただく。今、食の世界では「地産地消」があらためて見直されている。地産地消は食材だけではない、酒もまたしかり。自然豊かな山形・米沢ではぐくまれた美酒を愛し、広めようとしている人がいる。「酒の店 五百川屋酒店」の樋口豊さんだ。
客との会話の中からその人に合う酒をセレクト
樋口さんがもっとも大切にしているのは、客との会話だ。星の数ほどある種類の中から、自分好みの酒を見つけるのは難しい。そこで樋口さんは、何気ない会話の中からその人の食の好みを探り、その人が一番おいしいと感じてもらえそうなお酒をセレクトする。
「味覚は年齢によって変わってきます。例えば、砂糖とミルクを入れたコーヒーを好んで飲んでいた人が、年を重ねるとともにブラック好きになったとします。その方はコーヒー以外でも苦味が大丈夫だろうと予想し、これまで飲んできたものより重いタイプの赤ワインや辛口の酒をお勧めしてみます」。
本人も気付かない味覚の変化を察知し、一番合ったお酒を見立ててくれる。まさに樋口さんは、“わが家お抱えのお酒ソムリエ”のような存在だ。
日本酒好きが高じて、オリジナル酒「五代目」を作る
海外では日本食ブームと相まって注目されつつある日本酒だが、国内では一時期ほどの人気はなくなり、いまや廃業する酒蔵も出てきているという。
「今は若い世代を中心に缶チューハイが人気です。でも缶チューハイだけじゃなく、いろんなお酒を飲んで欲しいと思います。TPOに合わせて飲むものを変えるというのも、お酒の楽しみ方の一つ。その選択肢の中の一つに日本酒も加えてもらいたいですね」。
強い酒というイメージのある日本酒だが、度数はワインとほぼ同じ。食わず嫌いせず、まずは一度味わってみて欲しいという。日本酒をもう一度見直してもらいたいという熱い思い入れから、とうとう樋口さんオリジナルの酒「五代目」を造ってしまった。
「2年前から米沢の酒蔵と提携して、酒米に新種の『出羽の里』だけを使ったオリジナル酒を造っています。名前の由来は、私が五代目店主だから。冷やはサラッとして口当たりがよく、燗にすれば辛さが引き立ち、どんな料理にも合うのが特徴。試飲した時に『これが私の求めていた味だ!』と感じ、すぐに販売を決めました」。
飲みやすい「五代目」をきっかけに日本酒好きになってくれる人がいれば、という樋口さん。
「地酒とは、その土地で取れるものを使いその土地の環境で作り出される、その土地から切り離せないもの。特に山形は酒造りに恵まれた風土で、“山形の酒にハズレなし”といわれます。山形・米沢の地で生まれたおいしい酒を、もっと多くの人に味わってもらいたいですね」。
夫婦で、親子で、恋人と、気の合う仲間と…。今夜は日本酒でゆるりと時間を楽しんでみてはいかがだろう。
最近のコメント