海のない地域に新鮮な海の幸を届けたい!
キムラ中央店・商品部鮮魚マネージャー
手塚清美さん
「一日三食、刺身でもいいですね」。
そう笑って話すのは、手塚清美さん。魚好きが高じ、とうとう魚屋さんになってしまったというユニークな経歴の持ち主だ。米沢の各家庭の食卓に新鮮な魚を届けたい一心で、長年尽力してきた。
新鮮な魚を店頭に並べるため、自らトラックを運転
高校時代にキムラで商品陳列のアルバイトをしていた手塚さん。手塚さんの目線の先にはいつも、鮮魚コーナーで働く当時の店長の姿があった。
「ビニールの前掛けをして、きびきびとその場を仕切り、威勢のいい声で呼び込みをする店長がすごく格好良くて。憧れでしたね」。
高校卒業後、キムラへ就職した手塚さんは、念願かなって鮮魚コーナーに配属された。魚をさばくことが面白く、仕事が楽しくてしょうがなかったという。「仕事に魅了され、どんどんのめり込んでいきましたね」。
ある日手塚さんは、売り場に新鮮な魚が少ないことに気付く。並んでいるのは紅鮭や筋子といった加工品や乾物ばかりだった。当時は今ほど輸送手段が発達しておらず、浜から店頭まで2日もかかっていたため、サンマの刺身のような鮮度命の商品を並べることは、到底できなかった。
「それならば私が直接浜へ行って、トラックで運んでこようと。閉店後米沢を出て海まで走り、早朝に水揚げされる魚を買って米沢まで戻り、翌朝の開店時に店頭に並べました。あの頃は、寝る間も惜しいくらい仕事に夢中でしたね」。
そこまでして運んできた鮮魚だったが、店頭での売れ行きは今ひとつだったという。
「お客さんは、私がトラックを走らせて運んできたピチピチのアジやヒラメではなく、なぜかその隣にある冷凍の紅鮭ばかりを手に取るんです。そこでまた気付きました。海から離れた米沢に暮らす人たちは、鮮魚の食べ方を知らない、調理法を知らないから買わないのだと」。
魚のおいしい食べ方を広めたい。手塚さんの新たなチャレンジ
米沢の人に新鮮な魚のおいしさを知って欲しい、魚のおいしい食べ方を知ってもらいたい…。手塚さんのあらたなチャレンジが始まった。料理を学び調理視界に入り、フグの調理師免許まで取得した。
「食べ方がわかれば、主婦の方々も新しい魚にも手を出しやすい。販売しながら、どう食べればおいしいかを買い物客に伝えていきました」。
その後トラック輸送も発達し、周囲の店でも新鮮な魚が並ぶようになった。しかしそこには手塚さんのこだわりがある。そして客との会話の中で築き上げた信頼関係がある。「魚を買うならキムラ」。そういって来店する客足が途絶えることはない。近隣の小料理屋の板前も食材を仕入れに通ってくる。
今は本部で仕入れや商品企画などを担当、以前に比べて店頭で魚をさばくことも少なくなった手塚さん。しかし魚への思いは昔とまったく変わっていない。
「当店主催の魚料理教室を定期的に開いています。旬の魚のおいしい食べ方、さばき方を教えています。こうやって少しでも魚の良さを広めていけたら、と思います」。
魚をとことん愛し、その良さを米沢市民に届けてきた手塚さん。そのきびきびとした威勢のいい姿は、手塚さんの理想像だという店長の姿に似ているのかもしれない。
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