履きよい靴をいつまでも。熟練のシューフィッター
「靴のあいづや」
店主 田近健一
よく「健康の基本は足から」といわれる。内臓のツボが足に集中しているということから、ここ数年はフットマッサージも盛んだ。その足に直接身につける靴に、あなたはどれだけ気を使っているだろうか。
たつまち交差点角にある「靴のあいづや」。履きよい靴を求め、老若男女問わず訪れる靴の名店だ。店主の田近健一さんがショーウィンドウに腰掛け靴修理を行う姿は、町の名風景ともなっている。
靴について一から独学で学び、技術を習得
先代は下駄屋を営んでいたという同店。田近さんが跡を継ぐ際、時代の流れを読み靴屋へ転換したという。昭和33年のことだった。
「当時は靴の需要が増えてきたとはいえ、靴メーカー自体が革靴に対しての知識が乏しかった時代。私も革靴について独学で学びました」。
革靴を売るためには、革靴の知識が必要だ。田近さんは、客の靴を修理しながら靴について学び、修理技術を磨いていった。
「あるお客様から『この靴は履き心地がいいから直して履き続けたい』と修理を依頼されたことがあります。なぜ、どこが履き良いのだろう…。修理しながら、靴の作りを学び、履き心地のポイントを研究しました。いい靴は材質も違うし、作りも丁寧。履きよい靴とは何であるか、お客様の靴でたくさんのことを勉強させていただきました」。
本当にいい靴とは…?履く人の気持ちになって靴を選ぶ
靴に悩みを持つ人は意外に多い。特に婦人靴はデザイン優先になりがちで、外反母趾やウオノメなどトラブルを抱えやすい。どうにもならず、同店に飛び込んでくる客も多いという。
「噂を聞いて喜多方からやってきた男性もいました。その方は痛風で足が腫れてしまい、既製の靴はどれも履けず悩んでいました。そこでまずその方の足に合う靴を探し、次に今持っている靴を足に合わせて修理してあげたんです。その方には本当に喜んでいただきましたよ」。
靴に足を合わせるのではなく、足に靴を合わせる。そんな当たり前のことができる靴屋が、実は少ない。高い修理技術とフィッティング技術を持った田近さんだからこそできるのだ。
田近さんは時折、「この靴はあなたに合わない」ときっぱり言うことがあるという。客商売として失礼極まりない言葉である。しかしそれは、靴に対する絶対の自信があるからこその発言なのだ。長年の経験と豊富な知識から、その人の足の形や用途などによって一番いいものを田近さんは勧める。
「最初はお気に召さなくても、騙されたと思ってまずは履いてみて、と勧めます。必ず後から『履き心地が良かった』と言っていただけますね」。
履き心地を持続させるため、アフターケアも充実。修理はもちろん、数年ごとにクリーニングをして新品同様の美しさを復活させてくれる。田近さんの手に掛かれば、同店の靴はどれも最低10年はもつという。
「『こういう靴屋さんがあって良かった』というお客様の言葉が一番うれしいですね。靴屋冥利に尽きます」。
もし今あなたが履いている靴に少しでも不満があるなら、田近さんを訪ねてみるといいだろう。靴が足にフィットする心地よさを、きっと味わえるハズだ。
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