米沢牛の伝統を守りながら新しいおいしさを探求
「グルメ小僧万吉」
店長・太田正さん
日本三大和牛の一つに数えられる米沢牛。きめ細やかな霜降りと、とろけるような食感が特徴で、全国にファンも多い。
「グルメ小僧万吉」店長の太田正さんもそんな米沢牛に惚れ、その味を全国に広めようと、新たな商品の開発に取り組む1人である。
米沢牛の新メニュー開発にチャレンジ!
ステーキ、すき焼き、しゃぶしゃぶ…。米沢牛の楽しみ方は、それだけではない。
「牛肉はマグロ以上に傷みやすいともいわれる繊細な食材です。それをいかにおいしいままの状態で食卓に届けるか、さまざまな切り口からメニューを考えています」。
そう話す太田さんが作り出したのが、同店オリジナルの『牛丼のレトルトパック』だった。
厨房に入った太田さんは、まず具材作りに取りかかった。ライバルは、多くの人が好んで食べる大手チェーン店。米沢牛のうまみを引き出しつつ、無添加で安心して食べられ、なおかつ多くの人に愛される味を研究した。しかし、太田さんを最も悩ませたのは、レトルトパックの製法だった。
「できたての味をそのまま食卓へ届けるにはレトルトパックにする必要がありました。しかし店内での製造・販売に、大型の専用機械を入れるわけにはいきません。自家用の圧力鍋で殺菌処理できないか、毎日実験を繰り返しました。袋が熱の変化や圧力に耐えきれず、何度も破裂させましたね(笑)」
試行錯誤の末、調理からパッキングまですべて店内厨房で仕上げたオリジナルの牛丼が完成した。
「牛丼だけはどうしても商品化したかった。その強い思いだけで、半年で完成させました」。
うまみが凝縮されたコクのある味ながら、化学調味料特有のベタつき感のないあっさりした味わい。ライバルだったはずの大手チェーン店の味を超える自信作ができあがった。
「現代の“萬吉”でありたい」。伝説の料理人・萬吉への思い
太田さんは、牛丼のほかにも、牛肉の佃煮を使った変わり種の「米沢牛コロッケ」や牛トロの寿司など、次々と新メニューを生み出している。このチャレンジ精神の源は、料理人・萬吉へのオマージュだった。
米沢牛の父と呼ばれるチャールズ・ヘンリー・ダラス。彼は英語教師として米沢藩藩校・興譲館に招かれた際、横浜から萬吉という名のコックを連れてきた。萬吉が地元の牛肉を使い西洋料理を作ったのが米沢牛のはじまりといわれている。ダラスが任期を終え横浜に帰った後も、萬吉は米沢の地に残り、牛肉料理店「牛萬」を開店、米沢牛の礎を築いた。
「萬吉は、それまで牛肉を食べる文化がなかった米沢で、牛肉料理を初めて出したフロンティアスピリットを持つ反面、その人柄はおごりたかぶらない小僧さんのような愛想の持ち主だったといいます。そんな萬吉さんのようでありたい、彼の思想を受け継ぎたい。そんな思いから、彼の名前を拝借して店名にしたんです」。
店頭で扱う米沢牛の最高品質を、おいしい状態のまま食卓に届けたい、と商品開発への熱い思いを語る太田さん。太田さんはまさに現代の萬吉だ。
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